『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』宮沢和正著を読んで

『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』宮沢和正著を読んで


 この本には、正式には、もっと長いサブタイトルがついている。
 『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ ――日本初のブロックチェーンで世界を変える』
というものだ。
 著者はソラミツ代表取締役社長の宮沢和正氏。日経BP刊。

 バコンは、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)が2020年に正式稼働させた中央銀行デジタル通貨(CBDC)である。
 CBDCといっても、この場合、具体的にはスマホのアプリであって、特定個人のウォレット(電子財布)だと思えば良い。同国の銀行や送金事業者で口座を作れば、バコンを利用できるようになる。中銀の通貨と呼んでいる通り、紙幣リエルの代わりのもの。バコン内「リエル」は紙幣リエルとまったく同等のものとして買い物や送金に使うことができる。

 カンボジアは、「銀行口座を持っていない国民が大半」で、「法手通貨リエル(KHR)よりも米ドル紙幣が圧倒的に多く使われ、決済の8割程度を占める」といった状態だった。そこで中銀は、デジタル通貨を導入して、国民の金融包摂(インクルージョン)や自国通貨の利用拡大を図ったわけだ。
 ブロックチェーン技術により偽造できないデジタル通貨が作れるようになったからこそ、一国の正式な通貨をデジタル化することが可能となった。リエル紙幣は次第に姿を消していく。緊密接触を避けたいコロナ時代にぴったりでもある。

 同書では、ソラミツがNBCから連絡を受け、精いっぱいの提案を持って真剣に交渉したことから、NBC職員も会津に招いての開発作業など、エピソードが満載だ。ブロックチェーン技術企業の大型プロジェクトの一例として読むだけでも、おもしろい。

 だが、CBDCなどのデジタル通貨って何だろう、どういう性格を持っているのだろう、といったことも気になるのが、大方の読者の気持ちだろう。同書では、コラムをたくさん設け、そういった疑問にも答えている。
 「暗号資産(仮想通貨)との相違点」、「電子マネーやQR決済の口座型との違い」などについて説明が追加されている。つまり、同書は、ブロックチェーン技術のデジタル通貨を知るための入門書としても読めるのだ。

 日本は、日本銀行や多くの金融機関、決済事業者などの複雑なシステムが出来上がっており、CBDCの必要性は高くないとの意見もある。しかし、中国のデジタル人民元は年内にも登場する予定だし、フェースブック系のディエム(旧リブラ)が米ドルを裏付けにしたステーブルコインを具体化してくる日も近い。
 こうした通貨がスマホのアプリ経由で使えるとしたら、あっという間に世界に広まる可能性も否定できない。日本円に比べ、デジタル化によって米ドルや人民元での取引がさらに便利・低コストになったとき、多少の為替変動リスクを負っても、そちらを使うことが合理的になる可能性が十分にあるからだ。
 デジタル化やブロックチェーン技術が通貨の利便性を変え、これまでと違う通貨利用や、新しいビジネスを生んでいくだろう。そんな近未来に備えて、この本『ソラミツ』を読んでおくことをお勧めする。
『ソラミツ』宮沢和正著、日経BP社
『ソラミツ』宮沢和正著









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